2012/11/01

早稲田大学 講義「ポピュラー音楽論2」を聞きに行ってみた(2012/11/01)

評論家 佐々木敦氏twitterwikipediaによる早稲田大学の講義「ポピュラー音楽論2」にて、書籍「アイドル・ソング・クロニクル2002-2012」を取り扱うと言う情報がTLに流れてきたので、興味があったので早稲田大学まで足を運んでみました。


「アイドル・ソング・クロニクル2002-2012」とは

まずこの書籍について説明を簡単にしておくと、「10年間の約300曲を厳選して熱く解説」(表紙より抜粋)と言うもので、近年のアイドルディスクレビューを中心に構成された内容になっている。

吉田豪、南波一海、原田和典の3名で選出・解説がされた本で、有名どころからマイナーどころまで掲載されていてなかなか面白い本になっている。

付録としてCDがついてるのだが、ここ数年のインディーアイドル/ライブアイドル/地下アイドル音源が収録されていて、その盤の内容だけでもお得感ある本だなと思い入手しました。

お値段なんと1800円!amazonでは2013年5月現在枯れているらしいですが、書店で注文すればまだ手に入るそうなので、興味ある方は書店で発注されてはいかがでしょうか。

…原田氏は“~クロニクル”の元となる、ミュージックマガジンにてポップス評を書かれている方で、吉田・南波両氏だけだと“ミュージックマガジン増刊”感が出ない為に迎えられた印象で、比較的マニア度の低い作品の評価を本誌で担当されているみたいです。その辺については少しだけ後述。
ポピュラー音楽論2 ゲスト:南波一海

この日まで、佐々木さんのTwitterなどで講義に関する情報を見守っていたのだが「もぐりこみ大歓迎!」とのことだったので行くことにした。

そもそも大学の講義にもぐりこむと言うのも、大学を卒業して結構経つ身としては緊張が走るものなのだが(しかも早稲田出身じゃないし!)、どんな話が展開されるのか興味があり、その話をblogに書いていた方(早稲田の学生さん)とコンタクトを取って詳細を聞きました。

それにしても行きづらいなーと思ってたのですが、直前になって南波一海さんも出るとのことで、若干アウェー感が減った!と喜んで行きました(笑)。

いざ現地に向かってみると面識ある知り合い(早稲田の学生ではない)もいたので、多少はそわそわした気持ちが落ち着いた。

どうだったか

ざっくりどんな話が出たかをメモ程度に書いておこうと思います。

そもそもどういう授業で、どういう切り口で話をしているかとかわからないのだが、まず佐々木さんから南波さんへ質問。「この本が何故できたか?」と言う話題からスタート。「単純に流行ってるから」「CD100枚じゃ少なすぎる」と言うことでこの内容、ボリュームになったとのことだった。

付録CDについて、収録のオファーを出したら、だいたいのところから「是非!」と返って来たと言う話。ちょっと面白かった(笑)。

「地方アイドルについては付録CDへの収録ははずした。後にボックスセットで地方アイドルに特化したアイテムを出す予定」とのことだった。(2013/04/24にT-Palette Recordsから「Japan Idol File」としてリリースされた)

CDの収録曲順については「単純に古い順番から収録しただけ」「THEポッシボーのライブトラックに関してはボーナストラック的な位置で収録」とのことだった。何か曲順が練られているのかとぼんやり思っていたが、単純に年代順と言うのには驚いた。

本の内容については「吉田豪さんと自分の好みが強く出ていると思う」と南波さんは語っていた。一読した限りでも、原田氏があまりアイドルソングについて特化してないのだなと言うのはすぐにわかるのと、この本において書いている量が少ないことからもそれはなんとなく感じられたので納得()。

…余談だが、原田氏のレビューが酷く、「器楽演奏の側から来たので詞にはさほど頓着しない」とあとがきに書いているのだが、アイドルソングにおける歌詞の重要性を無視した発言が随所に見られ、読んでて正直な話、頭に来た(笑)。特に真野恵里菜の重要な1枚のテキトーな評価は1真野恵里菜ファンとしては黙って見過ごせないものだった。気になる人はぜひ読んでみてください(笑)。

ただ、三者の文章の書き方がそれぞれ違うので、そういう部分を見比べてみるのも面白いかもしれません。ただ、これだけまとまった近年のアイドルディスクレビュー本において、なぜそんな“そっけない評”が書かれ残るのか、その評を豪さんや南波さんが書いていたらもうちょっと良い感じの本になったのではないかと思うと、悔やまれます(笑)。

若干話がそれ、南波さんが何故アイドルソングに触れるようになったのか?の話題に移った。グラビアアイドルシーンの話からライブアイドルの話、震災以降でももクロが台頭、アイドルの記事がアイドル専門誌ではなく音楽雑誌に載る機会が増え、そこから両方書ける南波さんにアイドル関連の仕事が増えてきたと言うような話が出た。

現場でCDを買い集める「フィールドワーク」の楽しみ、重要性の話題も出た。自分も似たようなことをしているので共感した。

「なぜ今これだけ盛り上がっているのか?」については「後付だが、盛り上がってるので良い作家が集まるのでは?」「アイドルになる側も、なりやすい状況が出来てきてるのでは?」と言った話が出た。


高山えりか「優しさに包まれて」
そこから楽曲などのクオリティの話題になり、出席している学生から「付録CDに収録されていた高山えりか〈優しさに包まれて〉のアウトロでエフェクトかけ間違いみたいな部分があって、そこが面白い」と言った意見などが出た。よく聴いていた曲なのに特に気付いてなかったので、はっとした(笑)。

クオリティの高いものが非メジャーでも増えてレベルが底上げされたみたいな話題も出ていたと思うのだが「不思議と、楽曲が良くないと人気が出ない」と言った話題も出た。

話が前後するが、「~クロニクル」を手に入れた学生の話を聞いてみようと言う話になり、先述の高山えりかの話、「聴いてるうちに、収録されていたT-Breakがクセになってきた」と言っている学生もいて、なんとなくクセになる理由がわかるので面白かった(笑)。


2013年5月時点で“ベルハー”の音源が収録された流通音源「Our Shining Idol 今君に会いたい」。avexから2013/03/27に発売、選者は吉田豪さん。
歌唱の技術的な話にもおよび、「音程が高くて歌えない歌を無理やり歌わせるとどうなるのか?」と言った話からBELLRING少女ハートの音源(ボクらのWednesday)が流された。

手売りしている音源が出ている程度のグループの曲が早稲田の講義で流れると言うのも面白いなーと思って耳を傾けた。

その話が終わったあとぐらいで、某アイドルユニットに所属する女の子が飛び入りで来てたので、紹介を受けて前に立たされていた(笑)。

現在のユニットに所属する前はソロで“地下活動”をしていたとのことで、「なぜ活動を始めようと思ったのか?」について話をしてくれた。歌手活動がしたく、SNSで楽曲提供してくれる人を募った過去などについて触れられた。

某ユニットがどういう活動して、今日に至るのかについても多少触れられ、最後にリリースされたアルバムについて「告知しとけば?」と促されて、簡単に告知までしてるのが面白かった(笑)。

某アイドルは他の用事があるとのことで、ここで教室から退出。貴重な「当人」からの話が聴けて面白かったのと同時に、久しぶりにその子を見たのだが、かわいかった(笑)。

続いて、アイドルライブにおける「掛け声/コール」などの話題になった。出演者以外も声を出して、一緒に動いて「一体感を楽しむ」ことがアイドルのライブにはあるから、それはそれで良いのではないか?と言う話に至った。

ある程度、アイドルソングの中で「お決まり」のことがあり、例えばBメロでは“PPPH”と言われる手拍子(パン、パパン ヒュー)が入る構成だったり、“落ちサビ”と言われる2番後の間奏明けのリズムが抜けて歌を強調するパートであったり、そういうものが用意されていて、決まったコール/振りを客側がすることで楽しめる面もあるが、そういうのにとらわれないアイドルソング(ロック色を強めたものなど)も今日出てきてると言った話も出た。

「アイドルのお客さんは、“盛り上げる”のがすごい」と改めて言われると、確かにそうだなと思った。アイドル以外だと各々楽曲のリズムに体を委ねたりして楽しむイメージだが、ステージに立つアイドルへの熱烈な声援があって“盛り上がり”が成っている。個人的に、楽しくて“盛り上がる”というよりは“盛り上げてる”傾向についてはアイドルのライブをよく見に行く身ながら疑問ではあったので、コールの類は名前を呼ぶ以外はあまりしないことに落ち着いている。

コールの話題から、続いて「3.11震災以降、希望を持てる対象として人気が出たのか?」「これからもアイドル人気は膨らみ続けるのか?」と言った話題へ。南波さんとしては「売り上げが頭打ちなので、今年(2012年)がピークではないか?」とのことだった。グループ数が増え、イベントが増え続けている割に、マイナーアイドルファンの数が爆発的に増えているわけではない辺りでは、確かに頭打ちだろうなとは思った。(AKBなど、テレビに出ていて全国区に人気が及んでいるものについては論外だが)

南波さんがCDジャーナルにて連載している「南波一海のアイドル消耗戦」のタイトルに触れ、「みんな疲れていってるので、限界が来るのでは?」と言った話も出て、次々に辞めて行くアイドルの顔が頭をよぎって思わず頷いた。(上述の高山えりか然り)

最後らへんの話題は「K-POPのアイドルグループと日本のアイドルの違い」について触れられ、「K-POPグループは鍛え上げられて完成された状態で出てくる」「日本のアイドルは“頑張っているところを見せ”て、それを応援する」と言うあたりで質が異なるのでは?と言うような話題が出たりした。

話はいくらでも広がるものだなと思ったのだが、この辺で時間いっぱいと言うことで終了。


この授業が終わってから、この講義でよくやってるらしい飲み会にも混ぜてもらった(笑)。

なかなかない機会だったので、アウェー感はすごかったが、とても貴重な機会だった。

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